天真寺通信
蓮如上人御影道中(合掌の道)②
京都から福井県吉崎別院まで 蓮如上人の御影を歩いて運ぶ旅の中にはいくつかの難所があります。
そのなかでも最大の難所といわれるところが、福井県今庄町の木の芽峠です。
標高628メートル。ここは見学だけでしたが、とにかく勾配のきつい坂道でした。
このような坂道、山道ではリヤカーでは通れないので、交代で御影をかついだり背負ったりして運ばれます。
この峠は蓮如上人だけではなく、親鸞聖人や道元禅師、朝倉一族や織田信長、豊臣秀吉、源義経、松尾芭蕉なども通られたといわれますが、南北朝時代などにはたくさんの凍死者もあったと伝えられています。
本願寺第8代宗主の蓮如上人は応永22年(1415)のお生まれで85歳で京都山科本願寺にてご往生されました。
吉崎に拠点を置かれたのは57歳から61歳までのわずか4年間です。
わずか4年ですが、その間にたくさんのご功績を残されました。
今浄土真宗の朝夕にお勤めされる「正信偈(しょうしんげ)」・「和讃」を定着された事、「南無阿弥陀仏」の六字名号を墨書されて数多く授与された事、そして「御文章」をたくさん執筆されて、吉崎に参詣された方々が持ち帰ってそれぞれの在所で「講」(寄合)がはじまったと伝えられています。
しかも吉崎に拠点をおかれていましたが、あちこちに出向いて教化活動をされていたそうです。
わずか4年というのに、蓮如上人の御影を待ち受ける方々を目の当たりにして、これは只事の4年ではないなあ、よっぽど蓮如上人は歩きまわり歩き回りして地域の方々にお念仏を伝えておられたんだなあ、と思う事でした。
そして、その教えは確実に人々に生きる喜びを与え、それが現在まで伝わっているんだなあと思いました。
太鼓が遠くから聞こえ「蓮如上人のおとーりー」の掛け声が聞こえ始める頃には集落の人々は沿道で待っていらっしゃいます。
そこには高齢の方から子供さん、赤ちゃんをだっこしているお母さん、本当に出られる方は全員出てきておられるんじゃないかなあ、と思うほどです。
そしてみんな合掌されていました。アスファルトに正座をしておられる方もいらっしゃいます。「今年もお会いできてよかった」と涙ぐんでいらっしゃる方もおられました。
本当に楽しみにして待っていらっしゃった様子でした。
吉崎別院に着く頃にはすっかり暗くなっていました。
最後の階段は肩に担いで一気に駆け上がられます。
別院でお待ちの方々は皆「お帰りなさい」と この時を待ちに待っておられました。
ご影を本堂に移されて「お正信偈」のお勤め。
あくる朝はお尋朝(朝のお勤め)の後すぐ脇にある吉崎御坊の跡地を見学しました。
地域の方からは「おやま」と呼ばれ親しまれています。
桜がきれいで素晴らしかったです。
でも何よりも素晴らしかったのは 皆さんの合掌されている姿でした。
合掌している姿は本当に美しく尊いなあ、と改めて思わせていただいた感動の旅でした。(終)
(果)
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