天真寺通信

法話

大喜利法話
令和元年から2年への年越しは、築地本願寺の除夜会・元旦会にて「ブッダde大喜利~お坊さんに聞いてみよう~」を開催させて頂きました。
築地本願寺にて年越しを迎えに来て下さった方々の皆様のモヤモヤを聞き、いろんなジャンルのご質問にお答えする、お坊さん三人による法話ライブです。
ご質問の一例です。
・主人の一言一言にイラつきます。お坊さんも他人、家族にイラつくことはありますか?その時はどうやってスッキリさせますか?
・天台宗は「ナムアミダブツ」だが浄土真宗は「ナモアミダブツ」というのがなぜか?
を致します。
・受験に受かるかどうか・・・
です。
今回は、受験についてのご質問がありましたので、東井義雄先生の「元服」の話をお話させていただきました。
ある中学生の作文です。(東井先生の著書より)
僕 今年三月 担任の先生に奨められ A君 二人 高校を受験した。いわゆる有名高校。担任から 「君たち二人なら絶対に大丈夫だと思う」 強く奨められた。父母も喜び 僕らは得意 期待を裏切ってはならない 僕は猛烈に勉強した。
 ところが、A君は期待通りパス、僕は落ちてしまった。得意の絶頂から奈落の底落ちた。実力テストでは いつも僕が一番 A君がそれに続いていた。
それなのに、僕が不合格 A君が合格。 成績の下のほうが合格したのだ。誰の顔も見たくない。惨めな思い。自分の部屋に閉じこもってる僕。父母が僕の好きな物を運んできても 優しい言葉をかけてくれても、余計に癪にさわった。何もかもたたき壊し、引きちぎってやりたい怒りに燃えながら 布団の上に横たわっている時、母が入ってきた Aさんが来て下さったよ。
 僕は言った。僕は誰の顔も見たくない。特に世界中で見たくない顔がある。世界中で一番憎い顔がある。誰の顔か言わなくたってわかるだろう。帰ってもらってく。母はせっかく来てくれているのにそんなこと言えないよ。あんたたちの友達の関係ってそんなに薄情なものなの。ちょっと違えば敵・味方になってしまうような薄っぺらなものなの。母さんにはAさんを追い返すなんてできないよ。嫌なら嫌でそっぽを向いていなさいよ。そしたらお帰りになるだろうから。母出て行って、入試に落ちたこの惨めさ、僕を追い越したことのない者に見下される。こんな屈辱あるだろうかか気が狂いそうになった。布団を被って寝ていたが、こんな惨めな姿なんて見せられるか。
 胸を張って見据えてやろうと僕は起き上がった。戸が開いた。中学の三年間A君がいつも着ていたよれよれの服のA君。涙を一杯ためたA君が、くしゃくしゃ顔で、「B君、僕だけが通ってしまってごめんね」やっとそれだけ言ったかと思うと、両手で顔を被い駆け下りるようにして階段を降りていった。
 思い上がっていた僕 いつもA君になんか負けないぞ A君を見下していた僕。もし、僕が合格して、A君が落ちたとして、僕はA君を訪ねて、僕だけが通ってしまってごめんねと慰めに行っただろうか。ざまあみろと、余計思い上がったに違いない自分に気が付くと、こんな僕なんか落ちるのが当然だったと気が付いた。
 彼とは人間の出来が違うと気が付いた。通っていたら、どんな恐ろしい一人よがりの思い上がった人間になってしまったところだろう。落ちるのが当然だった。落ちてよかった。本来の人間にするために、天が僕を落としてくれたんだと思うと、悲しいけれども、この悲しみを大切に出直すぞと、決意みたいのがわいてくるのを感じた。僕は今まで思うようになることだけが幸福だと考えていたが、A君のお陰で、思うようにならないことの方が、人生にとっても、もっと大事なことなんだということを知った。入試を希望通りパスしたとしても、そこでいい気になってしまわないで、落ちた仲間の胸の痛みが、自分の胸の痛みになるような人間であってほしいと思いますし、失敗した時に、この失敗したおかげさまでと受け止めて、立ち上がることのできるよ。
というお話です。
以前、ラジオで、「「負け」を知る経験」という話を聞きました。
アングロサクソンのエリート教育は文武両道といって、必ずスポーツをさせます。なぜならスポーツは敗北と挫折の連続だからです。これ以上頑張れないぐらい頑張って練習してきたのに、やすやすと負けてしまうことも。努力だけではどうしようもない限界にぶちあたる。でも、そこであきらめてはいけない。なぜなら、それが人生であり、生きることだから。負けたことがない人間はやっぱり弱い。
と言う話でした。
試験に合格することも、不合格になることもあります。その出来事をどう受け止めていくことができるのでしょうか。
次回は、渋谷・東急ハンズにお題法話やります!!!
【#渋谷寺サー 1/26】プチ仏教体験ワークショップ at 渋谷東急ハンズ
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